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動力伝達方法の種類と選び方

モーターの回転(動力)をタイヤやアームなど、離れた場所に伝えるためにはいくつかの方法があります。 ここではFTCで主に使用される以下の4つの方法について、それぞれの特徴と選び方を解説します。

  • ギヤ (Gears)
  • タイミングベルト (Timing Belts)
  • チェーン (Chain)
  • 丸ベルト (Round Belts)

なお、各部品のより詳細な仕様や購入先については、それぞれの詳細記事を参照してください。

動力伝達方法 比較表

まずは、それぞれの特徴を一覧で比較してみましょう。

種類 伝達トルク 伝達距離 調整の自由度 静音性 主な用途
ギヤ ◎ 非常に強い △ 近距離のみ × 軸間距離は固定 △ 金属はうるさい ドライブベース、アーム関節
チェーン ○ 強い ◎ 遠くも可 ◎ コマ数で調整可 × うるさい ドライブベース、リフト
タイミングベルト ○ 強い ◎ 遠くも可 △ ベルト長に依存 ◎ 静か アーム、リフト、インテーク
丸ベルト △ 弱い ○ 遠くも可 ○ 溶着で長さ自由 ○ 静か インテーク

選定のポイント

1. トルクによる違い(力の強さ)

動かすものによって、必要な「力(トルク)」は異なります。

  • ギヤ / チェーン:
  • 非常に強い力を滑ることなく伝えられます。
  • 用途: ロボットの体重を支えるドライブベース(足回り)や、重いものを持ち上げるアームクライム機構にはこれらを使用します。
  • タイミングベルト:
    • ギヤやチェーンに次ぐトルクを伝えられますが、張力が不足すると「歯飛び」を起こすことがあります。適切に設計すればドライブベースにも使用可能です。
  • 丸ベルト:
    • 強い力がかかるとプーリーの上で滑ってしまいます。
    • メリット: この「滑る」性質を利用して、インテーク(吸い込み機構)などでゲームピースが詰まった際に、モーターを焼き付かせないためのクラッチ代わりとして使うことができます。

2. 伝えられる距離の違い

  • ギヤ:
    • 隣り合った軸同士でしか力を伝えられません。遠くに伝えるには多数のギヤを並べる必要があり、重量と摩擦が増えてしまいます。
  • タイミングベルト / チェーン / 丸ベルト:
    • 離れた場所にある軸へ、最小限の部品で動力を伝えることができます。アームの先端や、リフトの上部などに動力を送るのに適しています。

3. コストと入手のしやすさ

日本国内での調達しやすさと、部品単価の違いです。

  • ギヤ:
    • 高価・輸入推奨: 金属製の高強度なギヤは一般的に高価です。また、FTCの規格(モジュールや穴ピッチ)に合うものは、goBILDAやREV Roboticsなどの海外通販で購入するのが無難です。
    • Tips: 負荷が低い箇所であれば、3Dプリンターで自作することでコストを大幅に下げられます。
  • チェーン:
    • 国内調達可: 一般的な規格(#25など)であれば、ミスミやモノタロウで安価に購入できます。また、FTCではgoBILDAで販売されているプラスチック製のラダーチェーンもよく使われます。
  • タイミングベルト / 丸ベルト:
    • 国内調達可: これらもミスミなどで国内調達が容易です。

4. 設計変更・長さ調整のしやすさ

設計段階で軸と軸の距離(軸間距離)が決まっているか、後から変更する可能性があるかは重要な選定基準です。

  • チェーン:
    • 最も自由度が高いです。チェーンのコマ(リンク)を足したり引いたりすることで、長さを容易に変更できます。「とりあえず作ってみて、後で調整する」というスタイルに最適です。
  • 丸ベルト:
    • ウレタン製のベルトを熱で溶かして繋ぐ(バンコード等)タイプであれば、好きな長さに切って作れるため自由度は高いです。ただし、精度良く繋ぐには慣れが必要です。また、自分で溶着したベルトは強度が低いことが多いので、本番には使わないのが無難です。
  • タイミングベルト:
    • 設計力が試されます。 ベルトの歯の数は決まっているため、プーリー間の距離を計算通りにバチッと決める必要があります。設計を間違えると「ベルトがダルダルで歯飛びする」か「パツパツで入らない」ことになり、買い直しが発生します。
  • ギヤ:
    • 軸間距離は厳密に決まっており、1mmのズレも許されません。

まとめ: 結局どれを使えばよいのか

  • ドライブベース(足回り):
    • まずは チェーンギヤがおすすめ。頑丈で調整が効くチェーンは初心者にも優しいです。設計は難しいですがタイミングベルトも良い選択肢となります。
  • アーム・リフト:
    • タイミングベルト または チェーン。静かに滑らかに動かしたいならベルト、長さを柔軟に変えたいならチェーンを選びましょう。
  • インテーク:
    • 丸ベルトチェーン。特に丸ベルトは、万が一巻き込んでも滑ってくれるので安全です。もしくは、強度がいらないので3Dプリンタで歯車を作るというのも選択肢の一つです。