オリジナル部品の外注
チームで所有している3Dプリンターやボール盤などの工具を使用すれば、ある程度の部品は自分たちで作ることができます。しかし、非常に高い精度が求められる部品や、複雑な形状の金属部品、あるいは強度が不可欠な部品は、外部の専門業者に加工を依頼(外注)するしかありません。
この記事では、FTCで使用するオリジナル部品の主な発注先と方法を解説します。
1. Meviy (メビー)
Meviyは、ミスミが運営する部品加工サービスです。 3D CADデータをブラウザにアップロードするだけで、AIが自動で見積もりを行い、即座に発注することができます。
国内サービスであるため、 高品質かつ短納期 で部品が届くのが最大のメリットです。時間が限られているFTCのビルドシーズンにおいて、最も推奨される選択肢です。
しかし、これはミスミと同様法人のみ利用可能であり個人の利用は不可です。学生チーム単体で発注できない場合、学校のアカウントや、スポンサーである企業のアカウントを経由して発注する必要があります。
Meviyでは主に以下の2種類の加工が可能です。
① 板金加工 (Sheet Metal)
1枚の金属板や樹脂板を、レーザーで切り抜いたり、曲げたりして形を作る加工法です。
- 特徴: 比較的安価に、軽量で丈夫な部品が作れます。モーターマウントや、フレーム同士を繋ぐブラケットなどに最適です。
- 注意点: 板厚に制限があり、加工可能な形状にはルールがあります。
- 詳細: Meviy 板金加工の詳細情報
② 切削加工 (CNC Machining)
金属や樹脂の塊(ブロック)から、不要な部分を削り出して形を作る加工法です。
- 特徴: 板金では作れない複雑な立体形状や、ベアリングを圧入するための高精度な穴あけなどが可能です。
- コスト: 一般的に板金よりも高価になります。 板金で制作できる場合はなるべくそっちを使用することを推奨します。
- 詳細: Meviy 切削加工の詳細情報
2. 海外の格安加工サービス (JLCCNC / JLC3DP)
中国の企業が運営する加工サービスです。部品単体の価格は非常に安いですが、**「送料が高い」「届くのが遅い」「品質にバラつきがある」**という点に注意が必要です。
JLCCNC
Meviyと同様の切削加工サービスです。
- メリット: 加工費そのものはMeviyより安い場合が多いです。
- デメリット: 中国からの発送となるため、送料が高額になります。また、到着まで数週間かかることがあり、加工精度や表面の仕上がりもMeviyに比べると劣る場合があります。
- 使い分け: 「精度はそこそこで良い」「予備パーツとして安くたくさん欲しい」「納期に余裕がある」という場合に利用するのがオススメです。また、法人アカウントが使えない場合はこちらを使用するしかありません。
JLC3DP
JLCCNCと同じ会社が運営する3Dプリント代行サービスです。
- 利用シーン:
- チームに3Dプリンターがない場合。
- 家庭用プリンターでは印刷できない金属パーツや、大型パーツが欲しい場合。
- 非常に高い強度が求められるナイロン造形(MJF/SLSなど)を行いたい場合。
- 注意点: これもJLCCNCと同様、送料と納期を計算に入れて発注する必要があります。
3. 外注する際の重要チェックポイント
データをアップロードして発注ボタンを押す前に、以下の点を確認しましょう。
- 納期:
- 海外サービスは到着まで2週間〜1ヶ月かかることもあります。大会に間に合わなければ意味がありません。急ぎの場合は迷わず国内のMeviyを使いましょう。
- 総コスト:
- 「部品代500円+送料5,000円」というケースがよくあります。部品代だけでなく、送料と関税を含めたトータルの金額で比較してください。
- 素材の選択:
- アルミ(A5052など)、鉄(S45C/SS400)、樹脂(POM/ポリカーボネート)など、用途に合った素材と適切な厚みを選んでいるか再確認しましょう。
- 公差:
- ベアリングやシャフトを通す穴は、設計データ通りの寸法で仕上がるとは限りません(特に海外製の安価なサービス)。必要に応じて「公差」を指定するか、あらかじめ少し大きめに設計するなどの工夫が必要です。