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【高専ロボコン/学ロボ勢へ】 Anderson Powerpoleの紹介

Anderson Powerpoleとは?

高専ロボコンや学生ロボコンでは、バッテリーやモータの接続コネクタとして XT30XT60 などが主流だと思います。しかし、これらははんだ付けが必要だったり、頻繁な抜き差しで被覆が傷んだりと、運用上の面倒くささがあります。

そこで、FRC(アメリカのロボコン)で標準的に使われている圧着式コネクタ、Anderson Powerpole (アンダーソン・パワーポール) を紹介します。

基本スペック

Anderson Powerpoleは、コンタクト(金属端子)のサイズを変えることで、同じハウジング(プラスチックケース)のまま異なる電流値に対応できます。

項目 PP15 PP30 PP45
定格電流 15 A 30 A 45 A
定格電圧 最大 600 V DC 最大 600 V DC 最大 600 V DC
対応線径 (AWG) #16 – #20 #12 – #16 #10 – #14
使用ハウジング 共通 共通 共通
コンタクト材質 銀メッキ銅合金 銀メッキ銅合金 銀メッキ銅合金
結線方式 圧着 圧着 圧着
極性 無極性 無極性 無極性
主な用途 センサ / 補助電源 小型〜中型モータ 足回り / 大型モータ

Anderson Powerpoleの利点

1. オスメスの区別がない

XT60などの一般的なコネクタには「オス」と「メス」が存在し、バッテリー側はメス、アンプ側はオス…といった管理に気を使わなければなりません。

しかし、Anderson Powerpoleはコネクタ自体にオスメスの区別がありません。同じものを180度回転させて噛み合わせる構造になっています。これにより、設計時や在庫管理時に「オスメスの組み合わせ」を気にする必要がなくなります。

2. 大電流を流せる

最も一般的な PP45 シリーズでは、連続45A、瞬間であれば更に大きな電流を流すことができます。

縦横高さ1mを超えるFRCロボット(約50kg)を激しく動かすのに使われている実績があり、高専ロボコンや学生ロボコンの規模でも、足回りや昇降機構のメイン電源として十分実用可能です。

3. 横に連結できる (モジュラーデザイン)

これがAnderson Powerpoleを使う最大のメリットと言っても過言ではありません。

ハウジングの側面には「溝(ダブテイル)」がついており、これらをスライドさせて組み合わせることで、自由にコネクタを連結できます。

  • 2極(赤・黒)にしてバッテリーコネクタに。
  • 3極(赤・黒・白)にしてブラシレスモータ用に。
  • 4極にしてステッピングモータ用に。

専用のハウジングを買い分ける必要がなく、単体のハウジングをパズルのように組み合わせるだけで済みます。

4. 振動に強い

適切な嵌合力を持っており、FRCのような激しい衝突がある競技でもコネクタが抜けることは稀です。また、万が一の脱落を防ぐための固定ピン(リテンションピン)用の穴も用意されています。ちなみに、よほど強い衝撃が加わらない限りは、固定ピンは使わなくても十分強力に接続できます。

5. 誰でも同じ品質で作れる (圧着式)

XT60のような「はんだ付け」が必要なコネクタは、作業者のスキルによって品質にバラつきが出がちです(イモはんだ、熱による被覆溶けなど)。

Anderson Powerpoleは圧着端子なので、専用の工具さえあれば、新入部員でも熟練者でも均一で高い信頼性の接続を作ることができます。


Anderson Powerpoleの欠点

⚠️ 1. 値段が高い

一番のネックです。1セット作るのにハウジング2個+コンタクト2個が必要ですが、例えばRedigiformで購入した場合、ハウジング約100円/個、コンタクト約80円/個と、1ペア(プラスマイナス接続)作るだけで数百円かかります。XT60(数十円)と比べるとコストは跳ね上がります。

⚠️ 2. 入手難度がやや高い

日本では秋葉原の店頭などで気軽に見かけることは少ないです。主な入手ルートは以下の通りです。

  • Redigiform (推奨):
    AndyMark等の国内正規代理店です。Anderson Powerpoleに関しては国内在庫を持っていることが多く、国内送料だけですぐに入手可能です。
  • DigiKey:
    世界最大級の部品商社です。単価が高い(ハウジング1個400円以上する場合もある)ため、スポンサー契約がある場合や、他の部品とまとめて数千個単位で買う場合以外は割高になりがちです。ハウジングの色の種類が豊富なのは魅力です。
  • Amazon:
    検索すると出てきますが、品質の悪い模造品が混ざっている可能性が高いため、大電流を扱うロボット用としては推奨しません。

Anderson Powerpoleを使うために必要なもの

導入には以下の3点が必要です。これらはすべてRedigiform等で揃えることができます。

  1. Powerpole Crimp Tool (圧着工具)
    専用の圧着ペンチです。一般的な電工ペンチ(オープンバレル用など)では正しく圧着できず、ハウジングに入らなかったり抜けてしまったりするため、必ず専用工具を用意してください。
    (※リンク先はAndyMarkですが、Redigiform経由で取り寄せ可能です。詳しくはこちら)
  2. Powerpole Housings
    プラスチックのケース部分です。一般的に電源ラインには赤と黒を使用します。
  3. Powerpole Contacts
    中に入れる金属端子です。
    • PP45 (45A用): 最も汎用的です。太いケーブル (#10-14 AWG) を使う場合はこれを選びます。国内在庫も豊富です。
    • PP15 / PP30: 細い線を使いたい場合はこれらが必要ですが、国内在庫がない場合は取り寄せになります。Redigform経由で取り寄せは可能です。特に理由がなければ、まずはPP45で統一して運用することをお勧めします。