【高専ロボコン/学ロボ勢へ】 FRC用モータの活用
FRC (アメリカで開催されているロボットコンテスト) で使われるモータの中には、実は日本のロボコン(高専ロボコン、学生ロボコン等)でも強力な武器になるものがいくつかあります。 ここでは、特にオススメのモータと、それを制御するためのドライバ、そして導入時の注意点を紹介します。
スペックまとめ
以下にここで紹介するモータのスペック表を示します。
| 項目 | CIM Motor | NEO 550 Brushless Motor | NEO Brushless Motor V1.1 |
|---|---|---|---|
| ブラシorブラシレス | ブラシ | ブラシレス | ブラシレス |
| 電圧 [V] | 12 | 12 | 12 |
| 無負荷電流 [A] | 2.7 | 1.5 | 1.8 |
| 最大出力 [W] | 337 | 279 | 380 |
| 自由回転数 [RPM] | 5310 | 11000 | 5676 |
| ストールトルク [N・m] | 2.42 | 0.7 | 2.6 |
| 重量 [g] | 1270 | 141.9 | 425 |
| 回転軸形状 | 円 | 円 | 円 |
| 回転軸径 | 8mm | 3.175mm | 8mm |
1. CIM Motor
購入方法
購入方法は、部品の買い方ガイド 海外から輸入が必要なものを参照してください。 記事の内容はFTCチームを対象にしていますが、基本的な輸入の流れは同じです。記事内でも触れていますが、直接本家から輸入するのではなく、日本の公式代理店である Redigiform を使用することを強く推奨します。
- 販売ページ: AndyMark
特徴
CIMモータの魅力は、安い、高出力、とにかく頑丈の3点です。
- 価格: 1個あたり 41ドル + 送料 という、このクラスのモータとしては比較的安価に入手可能です。
- 出力: 学ロボ等で高出力が必要な場合、ブラシレスモータやマブチの700/800番台が主流ですが、CIMモータは 2.4N・m という非常に高いトルクを出せます。足回りや昇降機構に最適です。
- 頑丈さ: 学ロボ等でよく使われ、FRCでもよく使われる775系モータなどは、負荷をかけすぎると簡単に燃えてしまいます(筆者も何度か燃やしました)。しかし、CIMモータはかなり無茶な使い方をしても滅多なことでは燃えません。熱容量が大きく、非常にタフです。
回し方(モータードライバ)
FRCにおいては、以下のドライバを使用するのが一般的です。
- Victor SPX: エンコーダを使わない場合
- Talon SRX: エンコーダを使う場合
しかし、これらはCANバスを通じて制御するのですが、そのデータフレームが特殊であるため、汎用マイコンから制御できるかは現在筆者が検証中です。
そのため、高専ロボコン等のチームで使用する場合の選択肢は以下のようになります。
- 自作ドライバ: 技術力があるチームであれば、高電流対応のHブリッジドライバを自作するのが最も確実です。
- 市販ドライバ (国内) : 未検証ですが、市販されているCYTRON-MD20A が使用できる可能性があります(検証予定)。
- 市販ドライバ (海外) : 値段は高いですがKoors40は私の所属していたFRCチームでの使用実績はありませんが、他に使用している海外チームはあります。
⚠️ 注意事項
- 重さ: 1個あたり 1.27kg と、かなり重いです。重量制限が厳しいロボットの場合は設計段階で重量計算をしっかり行う必要があります。
- インチ規格の混在: アメリカ製部品のため、規格が混在しています。
- モータ固定ネジ・穴間隔:インチ規格
- 出力軸:ミリ規格 (8mm軸、2mmキー溝付き等)
- 設計時にはAndyMarkのページにある図面やCADデータをよく確認してください。
2. NEO 550
購入先
- モータ本体 (NEO 550): AndyMark、REV Robotics (製造元)
- 専用ドライバ (SPARK MAX): AndyMark、REV Robotics
特徴
学ロボチームがブラシレスモータを使う際、DJIのRoboMasterモータ(M2006/M3508)が人気ですが、それと概ね同等の出力を持つのがこの NEO 550 です。 名前の通り、マブチモーターの 550サイズ とマウント取り付け穴の寸法が同じであるため、RS-550用の既存のギヤボックスやマウントを活用できるのが大きな強みです。
回し方
NEO 550は「センサ付きブラシレスモータ」です。
1. モータードライバを自作する場合
センサ付きBLDCドライバを自作することになります。不可能ではありませんが、制御の難易度は高めです。
2. SPARK MAX(純正ドライバ)を使用する場合
FRC用のモータードライバ SPARK MAX を使用するのが最も簡単です。制御方法は2通りあります。
- CAN制御: FRCでの標準的な方法ですが、データフレームが特殊です。Raspberry Pi等のLinux環境から制御するための sparkcan というライブラリが存在しますが、現在検証中です。検証完了後にWikiで報告します。
- PWM制御 (推奨): SPARK MAXにはPWM入力ポートがあります。ここにラジコンサーボのようなPWM信号を入力することで回転制御が可能です。
- 詳しくは 公式ドキュメント (英語) を参照してください。
⚠️ 注意事項
- インチ規格: 一部にインチネジが使われています。
- アウトランナー: 胴体(ケース)全体が回転するアウトランナー方式です。配線や周囲のフレームが接触しないよう注意してください。
- 燃えやすい: ストールさせると比較的簡単に燃えます。また、エンコーダケーブルが1本でも断線した状態で回すと即座に燃えます。 私はFRCチーム所属時に3個燃やしました。取り扱いには十分注意してください。
3. NEO Motor
購入先
- モータ本体 (NEO): AndyMark、REV Robotics (製造元)
- 専用ドライバ (SPARK MAX): AndyMark、REV Robotics
特徴
NEO 550よりもサイズ・出力ともに大きい兄貴分です。 出力は最初に紹介した CIMモータ とほぼ同等ですが、重量はたったの 0.42kg しかありません。圧倒的な軽さが魅力です。
回し方
NEO 550と全く同じです(SPARK MAXを使用)。上記のNEO 550の項目を参照してください。
⚠️ 注意事項
こちらも同様にインチ規格とミリ規格が混在しています。出力軸の形状や固定穴のサイズに注意して設計してください。
【おまけ】 FRCのギヤボックスについて
FRCでは、上記のモータに適合する頑丈なギヤボックスが多数販売されています。
- Sport Gearbox: 堅牢な遊星歯車減速機。
- MAXPlanetary: モジュール式でギヤ比を自由に変更できる便利なシステム。
どちらも非常に頑丈で、減速比のラインナップも豊富で魅力的です。 しかし、出力軸が「1/2インチ (12.7mm) 六角軸」 という、日本では非常に部材が手に入りにくい仕様になっています。 スプロケットやハブなどをすべてインチ規格で輸入する必要が出てくるため、日本の環境ではあまりオススメしません。